2011年5月21日土曜日

電力・電話・郵便事業のあり方とは~ユニバーサルサービスを考える

東日本大震災を機に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を機に、電力会社や原子力行政の見直しが議論されています。原子力発電だけでなく、発電と送電の分離にまで、議論が拡大し、電気事業全般をゼロから議論するようになりました。のど元過ぎれば熱さ忘れてしまわぬよう、この際、ユニバーサルサービスの必要性とその負担方法についても、議論が深まればいいと考えています。



ユニバーサルサービスとは、生活に不可欠とされ、どんな離島や山間部でも必ず提供されるサービスのことで、主に電力、電話、郵便の三つが挙げられます。

電力は全国にある10社が、大口契約を除き、地域内の供給義務を負う代わりに、事業を独占することで、ユニバーサルサービスを確保しています。電気事業法で利益と独占が保証されているオイシイ業態です。

一方、電話の自由化は進み、電話番号ごとに毎月約7円をNTT東西に支払っています。このお金は、過疎地の電話線の維持に充てられています。離島や山間部での通信事業は、とても割に合いませんが、そこにいる人とつながることを、そこにいない人にも提供するから、都市部の人も費用を負担しているわけですね。

さらに、郵便。
もう無人化されてしまいましたが、富士山頂の測候所。真冬であっても、郵便が届けられていました。毎日ではなさそうでしたけれども。電話同様、どこにいる人にでも届くことに意味があるわけです。



都市と離島や山間部では、事業収益に差が出るのは当然で、田舎は赤字になるでしょう。でも、電話は赤字額を7円という形で補い、電力や郵便は独占によって、赤字に目をつむってもらっている状況です。

でも、今の形態が良いのでしょうか?



答えは簡単ではないけれど、その一つが発電と送電の分離(発送分離ということもあります)。
電力事業では、大口契約の自由化がなされましたが、多くは、海岸部のガス発電所から安い電力を買って、東京電力などの送電線を使って届けてもらいます。送電線利用料が高いというのが、批判の対象になっているわけです。
だから、新規参入事業者と同じように、発電部門と送電部門が分離すれば、同じ土俵で争えるというわけです。
風力とか太陽光という発電源と、それぞれの値段を見ながら、家庭で、どの発電事業者から電気を買うのかを契約していくことになります。発電源に市場原理が持ち込めるわけですが、消費者の環境哲学も問われることになります。
念のために言っておくと、送電部門への新規事業参入は、容易ではありません。特に変電所から、各家庭への送電線を、色々な企業が引いたとしても、これまであった送電線と重複してしまい、全体としての稼働率が下がってしまうので、費用対効果が上がらない、つまり、儲からないからです。だから、送電網は共用することで、社会全体として安く上がると、考えられています。



電話も、NTT東西の支店(電話局)までは、NTT、KDDI、ソフトバンクなどの基幹通信網は届いていますが、そこから私たちの家庭までが、事実上、NTTに独占されているわけです。これも、費用対効果が上がらないので、各家庭からNTT東西の支店(電話局)までは共用しているわけです。

しかし、基幹線通信網で競争しているNTT東西が、家庭までの線を他社に公平に貸し出すことができるのか、という、そもそも論は以前から根強くあります。NTTの企業形態について、いつまでも議論が続いているのは、このためと言えます。

電話局から家庭までの回線のことを、last one mileといい、電力も通信もこれが問題になるのです。



郵便も同様です。
郵便局網を利用すれば、全国で新商品を展開することが可能になります。郵貯のATM網をもっと生かせば、新規参入金融機関が全国どこでもATMサービスを提供できます。セブン銀行顔負けです。
郵便のlast one mile問題が、郵政事業の一体運営論議になってしまっていて、公共財としての全国網と、競争部分である金融や郵便を合併して、NTTのような形態になれ、という話に見えます。



いずれの問題も、公共財としてのlast one mileと競争分野を、どのように両立させるのかが主題といえます。その結果が見えてくれば、電力、電話、郵便も、同じような事業スタイルに落ち着くことになるはずですが、今はまったく異なる形態を取っています。一般家庭では、地域電力会社からしか買えないのですから、電力事業が、3業種の中では最も強く守られていると言えます。

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