2012年11月3日土曜日

ヒッグス粒子、確認か

物理系のネタ、なぜか関心が高いようです。
「ヒッグス粒子、確認か」という話、まだ書いていませんでした。



ヒッグス粒子は、質量の起源と言われています。そもそも、その書き方が分かりにくいですね。
現在の物理学では、世の中に四つの力が働いている、と考えています。
電磁気力、強い力、弱い力、重力の四つです。

電磁気力は分かりやすいですね。プラスの電気とマイナスの電気、磁石のNとS。その力です。
コイルの周りで磁石を動かすと電気が起きることからも、電気の力と磁石とは、不可分のものであることが分かります。

強い力は、核力とも言います。
原子核は+の電気を帯びた陽子がくっついています。+同士だから反発するのに、くっついているわけですね。
強い力で、くっつけてるんです。
ちなみに、陽子の中には三つのクォークという粒子が入っていますが、原子核をくっつけているのは、そのクォークをくっつけている力と同じです。

弱い力は、原子核が壊れるのに働く力です。ウランからヨウ素やセシウムが出てくるのは、この力でウランが壊れるからです。

そして重力。日々、体重計で実感してますね。



現在の物理学では、力は素粒子が伝えてくれる、と考えています。
この概念を最初に打ち立てたのが、湯川秀樹です。
ざっくり、重力を伝えるのに関わっているのが、ヒッグス粒子というわけです。

四つの力に働く素粒子と、物質を作る素粒子の一覧表が「標準模型」と言います。
その一覧表のうち、ヒッグスだけが、見つかっていなかったんです。
で、今回、見つかったかも知れません。たぶん、見つかったんでしょう。



これで、一件落着。ですが、終わりではありません。
この表を全部確かめられたら、宇宙にあるモノすべてを理解できると思っていましたが、ここ10年で、全然そうじゃないことが、分かってきました。

この標準模型で理解できるのは、宇宙の組成の4%程度。
人類はこれまで、4%に必死だったんです。だって、それで全部だと思ってましたから。

でも、人工衛星で宇宙を眺めたら、他にもあることが分かった。
まず約20%くらいは、私たちの知らない、重さのあるもの。Dark Matter(暗黒物質)と呼んでいます。
宇宙にあるものは、光で見ますが、こいつは光らない。だから、ずっと分からなかったんです。
でも、重さがあるから、天体の動きに影響を及ぼします。
星の動きがアヤシイと思っていた人は、いたようです。
今やもう、後戻りできないほど、Dark Matterの存在は、信じられています。
そう、信じているだけで、まだ誰も見つけていません。

Dark Matterについては、理論的候補があります。
ニュートラリーノという素粒子です。
標準模型を拡張して考えられた理論「超対称性理論」から予言されています。
今回、ヒッグス粒子を見つけた人たちも、このニュートラリーノを次のtargetに設定しています。
(その前に、ヒッグスの精密測定をするでしょうが)

でも、ニュートラリーノがDark Matterだという証拠はどこにもありません。
重さが似たような値になりそうだから、同じかも、と言っている程度です。
結局、両者が同じである、と何らかの方法で確認しない限り、宇宙の20%分を解明できたとは言えません。




残りの75%ほどは、ますます分かっていません。
とりあえず、名前をDark Energy(暗黒エネルギー)と決めました。
でも、分からないので、Darkとしています。
これは重力とは違って、互いに反発する力のようです。
上に向かって投げたら、落ちてくるかと思いきや、どんどん速くなって遠ざかっていくようなイメージです。
ナンノコッチャラ。
それくらい、何だか分かりません。



それを取り扱う数学も分かっていません。
新しい食材があるのは分かるけど、料理方法も食べ方も分からない、という感じです。



アインシュタイン級の新発見の時代が、再び訪れています。
興味深いことに、理論的にも分かっていないことが多いし、実際に確認しなければ自然を理解したことにはならないから、実験・観測の必要性あるのです。
若い知性の活躍する場所が、いつの時代もありそうです。