2012年7月17日火曜日

「やらせ」か、原発比率意見聴取に電力社員

将来のエネルギー政策決定を前に、政府が国民から直接意見を聞く会を開いている。電力会社員の発言が相次ぎ、紛糾を繰り返しているが、報道を読めば、政府の意図の不明確さが混乱を前いているように思える。


16日の名古屋会場の様子を伝える記事@朝日新聞デジタルによると、会では政府が2030年の原発依存度に挙げた0%、15%、20~25%の三つの選択肢について、それぞれ支持する3人ずつ計9人が意見を述べた。161人が意見表明を希望し、0%支持が106人、15%は18人、20~25%は37人だった。20~25%を支持する意見表明では、中部電力社員を名乗る男性がいたことから、会場でヤジが飛んだという。

15日の仙台会場の様子を伝える記事@河北新報によると、意見表明希望者は93人。内訳は0%支持が66人、15%が14人、20~25%が13人。20~25%を支持する意見表明では、東北電力執行役員企画部長と、同社OBが選ばれていた。さらに発言者9人のうち、3人が首都圏在住者だったという。


まず、中部電力社員や東北電力企画部長とOBが、自らの属性を明らかにして発言したことを評価したい。この事実が明らかになったことが、今後の議論の材料になるからだ。
つまり、20~25%を支持する声には、ランダムに選んでも電力会社員に当たってしまうような状況だった可能性がある。しかも、それは個別会場の問題ではない、と。


いずれの会場も、0%支持が過半数だ。それでも、20~25%支持と同じ、3人しか発言できない。だが、それぞれの支持表明者の声を聞くことが目的なら、そのような開催方法もありうる。
だったら、遠方から発言しに来る人を拒否しないのは理解できない。それぞれの案の発言者数の平等は確保するが、地域性は確保しないのだから。
もちろん、両者は両立させなければならないものではないが、両立させなかったら、一方を優遇し、他方を冷遇したと受け止められても仕方がない。
しかも、後に福島でも開かれるとしても、原発禍の最大被害地域である東北で、その電力供給先である首都圏在住者の意見表明を認めたのは、あまりに残酷だった。


意見を聞くことは、悪いことではない。だが、聞いた声は、あまりにも一部だ。
聞かなかった声は、政策を左右し得ない。聞いた声は、左右するのか。
そこまでして開いた、この意見聴取会。政策にどう反映させるのかが見えないから、人々の不信を招いているように見える。