2012年1月31日火曜日

ユーロ共同債はサブプライム債だ

EU首脳会議、とりあえずの合意を見たようです。(朝日新聞デジタル
欧州各国の債務問題、よーするに「あんたら、借金、本当に返せるの?」と疑われているんですね。

全額返済はムリだと思われ、もう貸したくない、と言われているわけです。


GDPに比べて借金の割合が大きいと言われる国、ギリシャ、イタリア、スペインなんかが疑われているわけですが、日本の方がよっぽど割合も高いし、額も大きい。


ま、疑われているから、仕方ないですね。


疑われると、貸してくれる人が減ってしまうので、「すごい有利ですよ」と利子を高くしないと、借りてもらえなくなります。どんどん高くすると、今度は返済が厳しくなります。
返すのが大変になるのを割けようと、ユーロ圏が共同で借りて、少しでも安い利子で済ませようというのが「ユーロ共同債」構想です。

でも、これってどこかで同じようなことをしていませんでした?


米国のサブプライム住宅ローンです。
金融スコアリングの点数が低い人、つまり返済能力が弱い人々に貸した住宅ローンのことでしたね。
プライムの次という意味の「サブプライム」という、イカサマを感じる名前。一人ひとりの返済能力が弱いから、金利を高くし、いろんな人の住宅ローンを抱き合わることで、「誰かが全額返せなくなったとしても、金利を考えると何とかなるでしょ」くらいな勢いで、第三者に転売したわけですね。

それが結局、リーマンブラザーズショックにつながっていくわけです。
持っている債権の中に、どれくらいヤバイ人がいるのか、分からなくて、だれも引き受けてもらえなくなったわけです。それだけじゃなくて、サブプライムローンを持っている人は、絶対損してる、と思われ、そんなヤバイ金融機関なんて、相手にできないと、取引してもらえなくなっていったんですね。
金を貸す審査能力は、銀行の基礎的能力だと思うのだけれど。


で、ユーロ共同債って、これとそっくり!

きっと、将来もそっくり!



そうなって欲しくはないのだけれど。

2012年1月30日月曜日

すわ、ヒッグス粒子か

物理系の話が続きます。
「ヒッグス粒子の兆候か」というニュースが駆け巡りました。(朝日新聞デジタル)

ヒッグスとは、質量を与える素粒子とは、一般に説明されている通り。
でも、それが見つかると、何がスゴイのでしょう。


物理学は、世の中には四つの力があると教えます。
そのうち、三つについては、力を伝える粒子が発見されていますが、重力に関連する粒子だけは、まだ、見つかっていないのです。

ドラゴンボールのように、全部そろえたいですよね。(少し古い?)

ということで、最後の一つとして、ヒッグスに注目が集まります。



でも、私が気になったのは、その発表方法。
スイス・ジュネーブの研究所CERNでのセミナーをネット中継するという手法でした。

歴史的大発見なら、学者は論文で、その内容を明かすでしょう。
論文は、掲載されるまでに、編集に携わる人が、内容を事細かに筆者に問いただし、内容の質を担保するからです。発表する価値があると認められないと、論文は掲載されません。
掲載する側も、事後に誤りがあったことが分かると、信用問題になるので大変です。

しかし、今回のようなセミナー形式だと、やりたい放題です。
真偽はもちろん、内容をどれくらい精査したのか、といった点について、第三者が質を担保することはできません。

今回の発表は「ヒッグスを確認」と言えるレベルには達していませんでした。
過去の例から推測すると、そのレベルに達したら、きっと、論文で一気に公表するのでしょう。



2009年にも、同様の事例がありました。
こちらは、米国で開かれたセミナーです。
ダークマター(暗黒物質)と言われるものが、見つかったのではないか、という発表です。
ややこしさを増すので、ダークマターが何であるかについては、説明を省略しますが、はやり新しい素粒子だと考えられています。

それが見つかったら大ニュースなのだけれど、やっぱりセミナーのネット中継でした。
やはり、「発見」とか「確認」というには及ばないレベルでした。


面白い話だけれど、私にとっては後味がスッキリしないニュースでした。

2012年1月29日日曜日

スマホなるもの

ようやく、スマホなるものを使い始めました。


3~4年前から、スマホが欲しいと思っていたけれど、会社で配布されるというから、ガラケーを使い続けていたのです。

そんな思いをしる人たちからは、「昔、欲しいって行ってたじゃない」と。


使い始めたスマホなるもの。
安全対策として、限られたアプリ以外は動かないように設定されています。
その結果、文字入力はキーボードの形が表示されるわけです。
画面を横にして、できるだけボタンが大きくなるようにして打ちます。
でも、指は狙った文字から少しずれることもしばしば。


アプリはインストールできても、起動できない。
なかなか良くできたシステムだ。

しかし、好きに動かせないと、壁紙を変えるのにも一苦労。
SDカードで画像ファイルを受け渡したが、ファイルが見つからない。検索検索。システムが理解できるdirectory構造があるらしく、PCでdirectoryを切ってファイルを入れると認識してもらえた。

画面サイズにトリミングすることになるのだが、壁紙用のトリミング枠を横にしようと、本題を横に向けると、写真までも横に向いてしまい…

検索検索。

仕方なく、PC側で適正サイズにトリミングしてからSDカードで搬入した。


スマートじゃない。

2012年1月28日土曜日

Plan B

勝負はどう転ぶか分からない。
F1では、走行中の状況やレースの進展で、何週目にタイヤ交換をするか、プランを途中で変更することがある。
ピットから無線で「プランBで行く」と、ドライバーに伝え、次回交換の時期の変更を指示するのだ。
強いチームほど、様々なプランを用意して、万全な体制を敷いている。



3・11以降、世界は変わった。

けれど、変わった状況に対応できているかは、心もとない。
結局のところ、Plan Bがどれだけ用意されているかが問われた。

私たちには、Plan Aしかなかったし、Aが万全だと信じていた。
そこには、それらしき根拠があったが、Plan Bを用意しないのは、怠慢でしかなかった。


「Plan Bで行く」ことにしたら、それで終わりではない。
「Plan Bで行く」ことにした瞬間、その次のPlanが求められる局面に入っているのだから。

2012年1月25日水曜日

放射線、写真・映像にどう影響?

福島第一原発2号機の原子炉格納容器内を撮影した写真や映像を、東京電力が公開しました。(asahi.com:写真映像
いずれも、放射線によるノイズが写っています。
放射線がなぜノイズを起こすのか、という疑問の声を聞きました。



静止画でも動画でも、現在はデジタル化されていて、光が半導体(CCDやCMOS)に当たり、それが電気信号となって記録されます。

放射線も光の一種。すごく波長の短い=振動数の大きい=エネルギーの強い光です。
静止画も動画も、カメラの半導体は目に見える光(可視光)だけを記録しようとしているのですが、放射線のエネルギーが強すぎて、半導体内の電子、つまり電気信号に影響を与えてしまうのです。



放射線は自然界にも存在し、地面から、あるいは宇宙から降り注いでいますが、普段の暮らしでは、そのようなノイズを見ることはありません。
しかし、燃料が原形をとどめない状態にある原発の、しかも格納容器という燃料に近いところでは、放射線量が多すぎることを、うかがわせます。



では、半導体ではなく、フィルムで写真を撮ったらどうなるか、という疑問も、当然湧いてくるでしょう。

昔の素粒子物理学の実験という感じです。
昔は、宇宙からの放射線を記録しようと、大きなフィルムを置いておいたそうです。粒子の軌跡がフィルムに描かれ、それを元に、様々な自然現象を観察していたそうです。

つまり、フィルムにしたら、半導体での静止画や動画と同じように、ノイズとして記録されるでしょう。

2012年1月23日月曜日

不確定性原理に新展開~ハイゼンベルグの不等式を拡張~

物理原理の一つである不確定性原理。それを記述するハイゼンベルグ(Heisenberg)の不等式では説明のつかない現象を、ウィーン工科大の実験グループが確認しました。実験結果は、名古屋大学の小澤正直教授の提唱する不等式(小澤の不等式)に合致しているそうです。(asahi.com

ここまで読んで、アレルギー反応を抱き、悶絶してしまう人がほとんどですよね。
前提知識を把握してからでないと、内容に踏み込めないからです。



まず、不確定性原理の位置づけ。
原子や分子といった微小な世界は、高校で習うようなニュートンの力学では説明がつかない。そのような世界を理解するための学問が、量子力学。その分野の基本原理の一つが、不確定性原理です。

では、不確定性原理とは何か。
私たちの体に光が当たっても、その威力で転んだりしません。でも、微小な世界で光にぶつかると、もの(原子や電子)が動いてしまうのです。

私たちがものを見るとき、ものに当たった光が目の中に入ることで「見えた」と思います。
原子や電子が見えるわけではないけれど、もし、そのような小さなものの位置を知りたいと思って光を当てても、当たった瞬間に動いてしまうからです。
だから、ある瞬間、それがどこにあるのかを正確に知ることはできません。
ある程度の「不確定性」を、常に持ち続けることになるのです。これが不確定性原理です。

それを、定量的に表したのがハイゼンベルグの不等式。 二つの値(上の例では、位置と運動量)を詳しく知ろうと思っても限界値がある、と記述しています。(厳密には正確な説明ではないが、ま、そゆこと)

ここまでが、最低限の前提知識。



で、今回分かったことは、ハイゼンベルグさんが「ある程度不確定性が残ってしまう」と言っていたことについては「確定できた」けれど、別の要素が出てきて、そっちを合わせた全体では、やっぱり「不確定なんだ」ということですね。



で、それって、どれくらい、すごいの?ということが知りたいですよね。

ハイゼンベルグの不等式を、小澤さんが拡張したということになるわけですが、似たようなことをしたのが、アインシュタイン。ニュートンの力学を拡張したわけだから。

小澤の不等式が、ハイゼンベルグを超えて一般的に成り立つかは、今後も検証が続くことになるでしょう。でも、検証に終わりなんてないんです。
だって、今でもアインシュタインの相対論の限界がないか、世界中で実験がなされているのだから。



この種の研究は、より精度を高めても成り立つか、ずーっと続きます。限界が現れたらまた、考えたり、先に理論が出てきたり。
何かの役に立てることが目的ではなくて、知的好奇心で探求する分野です。

最近は、量子力学を応用してた「量子暗号」の実用化が進んでいます。しかし、ハイゼンベルグの時代、そのようなことを考えて研究していた人など、いないでしょう。
今回も100年くらい経てば、応用の動きも出るのでしょうが。