最近身の回りで、繰延税金資産の話題に出くわす機会が多い。
「ざっくり」言うと、払わなくていい税金のこと。
分かりやすい個人の例は、株の売却損。
今年赤字が出たとしても、以降3年間、赤字を繰り越して、黒字を充当できる。
例えば今年500万円の赤字だったとする。
税率は利益の2割だから、500万円の赤字で生じた繰延税金資産は100万円。現金は動かないけれど、会計上のバーチャルな資産として、貸借対照表に記載することになる。
毎年100万円黒字だった場合、本当は課税されるはずだが、繰り越されている赤字は500万円なので、3年間とも無税になる。
その時、会計上は繰延税金資産から支払った、と妄想するわけだ。あくまでもお金は動くことなく、損益計算書、貸借対照表の世界。バーチャルな話。
しかし、500万円の赤字のうち、200万円は、3年の期間内に黒字を充当できずに終わる。
税金に充当できるハズの資産が、充当できなくなる。繰延税金資産として残っていた40万円は、取り崩すことになる。
それは、4、5年目の利益への税金として、財布から出ていく。
これは、バーチャルではない。
さて、問題は企業決算の場合だ。
企業の貸借対照表には、繰延税金資産が書いてある。赤字で生じたものもあれば、その他の要因、例えば将来支払う退職金に関係するのものもある。
これらは、将来の税金の原資として、バーチャルに書かれたものだ。上記で見たように、期間内に税金の支払いに充てないといけない。
期間内に充当できなさそうなら、貸借対照表に書いてはいけない。
企業側は書きたくても、監査でダメ出しされたら、従わないといけない。
これを繰延税金資産の取り崩し、という。
企業が毎年、繰延税金資産をフルに使えるだけの利益が見込めないと判断した時点で、全額を取り崩すのが一般的だ。
これもバーチャルな話で、お金は動かない。
だって、翌年以降の予想に過ぎないから。
それでも取り崩し相当額の赤字を計上することになる。
企業の巨額赤字は、このケースが少なくない。
ほとんどの場合、全額取り崩しはやり過ぎなので、修正のため、繰延税金資産を翌年、借対照表に復活させる。
前年と、ほぼ同額の資産が発生するので、巨額利益をとして、現れる。
取り崩しも復活も、バーチャルな話だ。
まとめ。
繰延税金資産には有効期限があり、期限内に使い切れるかがポイント。
取り崩しが生じるのは、使いきれない「かも」という時で、有効期限と直接関係ない。
「かも」って言う程度なのにほぼ全額を取り崩すが、それはやり過ぎなので、取り崩したのとほぼ同額が翌年復活する。
繰延税金資産の取り崩しに関する話題は、手堅く判断していることを装う、バーチャルな数字になっていることが少なくない。
この単年度バーチャルに振り回されないためには、お金の動きに注目したキャッシュフローを見ると良い。
バーチャルな乱高下には左右されない指標だからだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿