日銀の低金利政策で、年金資金の運用が困難を極めている。
企業年金の中には、予定していた利率(給付利率)を達成できず、母体企業が不足分を補わざるを得ない事態が発生しているところもある。
母体企業が負担を嫌って、利率を下げる動きがあるようだ。
しかし、その前に資産配分(ポートフォリオ)の見直しを検討する必要がある。
年金は40年間入金し、その後約20年間支出する長期運用になる。
老後の生活費だから、安全重視になるが、物価上昇も想定した上乗せも必要になる。
そのため、価格変動の激しい株式よりも、債券が中心の運用になる。
そのような守りの運用をしていても、リーマンショックによる株価急落で、巨額の運用赤字を補った企業も少なくない。
元々、債券中心で株式の長期保有をしているのだから、一時的な変動に狼狽することはなかったのに、目先の損失で何も見えなくなり、資産配分をさらに債券中心にするような「日和見運用」をしたところもある。
リーマンショックの時も、いつも通り「リバランス」したところは、今頃相当な収益を上げているだろう。
リバランスとはそういうものだ。
リーマンショックで痛い目を見て、今また痛い目を見ているとしたら、「不作為の罪」に問われていると言える。
日本国債中心の運用をしていたのなら、日銀のゼロ金利、マイナス金利政策を採用した段階で、見直しを検討しなければならなかったはずだ。
金利がつかない債券を持っていても、年金を増やすことなどできないからだ。
今後、金利上昇局面に入れば、国債の時価は値下がりすることになる。
さらに、日本の財政赤字拡大は続いており、財政への信認が陰れば、外国為替市場で円が暴落する恐れがある。
円建て日本国債の割合を高めすぎると、このような危険と心中することにもなる。
今日の年金は、そのような事態が起こっても、ある程度守れる運用を考える必要がある。
実際、大手生保は程度の差こそあれ、2017年度の資産運用計画で外国債券の割合を増やしていた。
「日本には帰って来ないだろう」、生保は信用リスクテークで海外へ ― ブルームバーグ
「投資の成否の9割は資産配分で決まる」と言われている。
長期運用とは、資産配分を放置し続けることではない。
資産配分の見直しを検討しても、約束した利率を確保できないのであれば、引き下げもやむを得ない。
しかし、そこまで検討した形跡が見られぬまま、給付利率の引き下げを論じるのは浅はかだ。
給付利率の引き下げは、貧しい老後をうむ。
専門的な話だが、ひとり一人が自分で考えなければ、生活を守ることなどできない。
0 件のコメント:
コメントを投稿