2012年11月9日金曜日

安全コスト、見通せぬ原発

そういうことか――。頭では分かっていたつもりだったことが、ストンと理解できる瞬間がある。
朝日新聞8日付朝刊科学面に掲載された「原子力規制委 5委員に聞く」。更田豊志委員のインタビューの見出しを見て、そう感じた。


「継続的な改善求める」


今、原子力規制委は、原子力発電に対する新たな安全基準を作り、2013年7月に施行しようとしている。更田委員はそれで終わりでなく、海外の事故・不具合、新技術開発に応じて、常に改善を求めていく考えを示した。

建物に例えると分かりやすい。
昔の建物が今も存在が許されるのは、「既存不適格」という概念があるからだ。

今の建築基準法に違反していても、法律施行以前に建った建物には適用されない。
現行法では不的確だけど、既にあるモノだから許容する。



しかし、更田委員の話は、原発には「既存不適格」を許さない、という考え方を示したと言える。
事故による被害の大きさを考えると、他の案件と同列に扱わないのは理解できる。
今までも「最新の知見」として、既存原発の安全性確認はしてきたハズだった。
しかし、事故が起こった以上、それが十分だったとは言えない。


この記事の掲載される前の10月22日、採算に合わないとして米発電会社が原発を閉鎖すると発表した。(朝日新聞
シェールガスによって発電単価が下がっているうえ、追加の安全対策指示によるコスト増も指摘された。


なるほど、原発の燃料はごくわずかなウランによるから、燃料のランニングコストは、火力発電に比べ安いハズだ。しかし、プラント価格や、事後の安全対策費は、桁違いに高い。
民間企業なら、収益計画を立てるハズだ。
しかし、世界のどこかで新たな問題が起こるたび、安全対策費を計上するとなると、安定した収益計画を書くのは困難だ。

原発再稼働で、日本の電力会社は収益が改善するというが、本当にそう言えるのだろうか。
将来発生するかもしれない安全対策費と、事故が起こったときの賠償・廃炉費用のリスクは、再稼働時には見えない。
原発を抱えるということは、それらによるリスクを抱えるということでもある。
それは、燃料のランニングコストが安い、ということに見合うものなのだろうか。
そして、実際にそのリスクが顕在化した東京電力は事実上破綻し、政府管理下にある。


原発は安いというけれど、検証可能で、定量的なデータが、もっと必要だ。
事故時に5兆円では足りないことは分かった(実際にどれくらい必要になるかは今も分からない)けれど、将来の安全対策費を見通す方法って、やっぱり確率・統計なのかなぁ?

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